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ニートと学ぶ法律の話 いつ使うのか良く分からない刑法十選

こんにちは

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ネットサーファーな人、ぼくです。

 

日もまた、ハロワ行くかネットサーフィンするかで悩んだ挙句、ネットサーフィンの道を選びました。


合法的に無料で読める、貴重な情報源ってインターネットにはゴロゴロ転がっています。例えば青空文庫であったり、WEB漫画を連載している公式サイトであったり、そして無料で読める一番面白い読み物と言ったら何だかわかりますよね?

 

そうです。最高裁判所判例集ですね。

 

普段から、そう読み漁っているわけではありませんが、時折ニュースで裁判の結果について触れられると、どういう経緯でこの結果に結びついたのか、ニュースだけでは分かりづらい判決もあったりします。そういうときにこの判例集に載っているかどうかを確認して読んでみたりしているのですが、このサイトは最新の判例のみならず、とても古い判例で、今でも活用されているもの等も所収されています。

 

しい法律論的な話が出来るほど、ぼくの頭は出来が良くないので何の参考にもならない記事なのですが、ネットサーフィン中に見つけた面白そうな判例を皆で見て、こんな裁判あったんやなあって気分になってもらえると嬉しいです。

 もくじ

 

ボロい吊り橋をダイナマイトで吹き飛ばした人の話

 

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過剰避難と認められない事例


裁判要旨 吊橋が腐朽甚しく、いつ落下するかも知れないような危険な状態にあつたとしても、ダイナマイトを使用してこれを爆破する行為については、緊急避難を認める余地なく、従つてまた過剰避難も成立しえない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/684/051684_hanrei.pdf

通行制限を強化するなどの方法をもって、危険を防止すれば良かったはずであり、爆発物取締罰則の適用につき法律上の減軽をし、更に執行猶予を附したことについて法令違反であり破棄とした事例。

 

昭和35年2月4日と、随分古い話だけど、裁判要旨だけで結構インパクトある、違法性阻却事由に関する話。


違法性阻却事由というのは、名前から想像できるとおり、本来違法である行為でも、その違法性が否定される内容のことを指す。民法と刑法では多少異なるのだけれど、国内刑法においては

 

刑法35条 正当行為

(法令行為、業務行為。 医師が執刀する場合や格闘技の試合等で傷害に問われないのはコレ。)

 

刑法36条1項 正当防衛

(自己または第三者の権利を守る行為。現在進行形で、生命、財産、身体などに対する不正な加害行為等から守る場合でないと認められないことが多い。犯人が凶器でぶん殴ろうとしたときにカラテキックをする蘭ねーちゃんがコレ

 

刑法37条1項 緊急避難

(正当防衛とは異なり、現在の危難を避けるために侵害行為以外から守るため行う行為。某ドラマでは便意を催したままの運転による事故を避けるために、駐車違反をしてトイレに駆け込んだ例などが紹介された。実際認められるかどうかは知らない

 

他にも自救行為、被害者の同意がある場合などもあるが説明はgoogle先生にお任せする。なお被害者の同意については殺人の場合、嘱託殺人となる。どうでもいい豆知識。


一見、このダイナマイトの事例においては緊急避難が認められる余地があるのではないかと思えるのだけれど、刑法における緊急避難には、それがやむを得ずした行為であることが必要。それも、他に取るべき方法が無かった場合でなければならないとする説がある。

 

つまり、別にダイナマイトで吹っ飛ばす必要は無かったやんけ、という判決。


運転手「ドアをバンと開けるなよ」 妻「かしこまりー」バンッ→結果、原チャリの人が怪我、運転手アウト

 

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信号待ちのため停車中、同乗者が後部左側ドアから降車しようとする場合、自動車運転者は、フェンダーミラー等を通じて左後方の安全を確認した上で、開扉を指示するなど適切な措置を採るべき注意義務があり、同乗者に左後方の安全を確認した上でドアを開けることを指示しただけでは、自己の注意義務を尽くしたものとはいえない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/123/050123_hanrei.pdf

 

どうやら運転者は同乗者に対して、後方確認をしたうえで適切な開閉指示をするなどの注意義務を負っているというお話。たとえ同乗者が不注意で第三者に怪我を負わせてしまったとしても、それが運転者の注意義務を同乗者に代行させたにすぎない場合は、注意義務を尽くしたとは言えず、運転者は業務上過失傷害に問われる。

 

これについては、色々思う所がある判例だと思う。事故には繋がらなかったものの同乗者の降車の際、そこまで気を遣っていない運転者は割と多いんじゃないかな? と思う。

 

ただ、それで事故が起きた場合は運転者の過失になる可能性もあるから気を付けたほうが良いよって判例。

 

彼は妻に対し、どの程度注意を促していれば、罪に問われなかったのだろうか……。

 

酔っ払い運転は心神耗弱?

 

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酒酔い運転につき刑法第三九条第二項の適用がないとされた事例


裁判要旨  酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあつたとしても、飲酒の際酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第三九条第二項を適用して刑の減軽をすべきではない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/838/050838_hanrei.pdf

割と有名な判例。たぶんこの記事の中では一番役に立つ。テストに出ると思う

 

所謂「原因において自由な行為」。運転をする予定でありながら飲酒をした時点で、飲酒運転時に心神耗弱状態であったとしても、減軽事由にあたらないとする判例。

 

ネットで法律系の話を良く見ている人たちには、わりとこの刑法39条に敏感に反応する人たちが多いと思う。飲酒運転の例においても、このような主張ができる法律はさっさと廃止しろという声も多いかもしれないが、実際適用される例もそんなに多くは無い。

 

ある説では、この判例を用いて、殺すために酩酊状態になって39条を適用させ責任を逃れようとすることを認めないとしている。

 

責任無能力者になった酩酊している未来の自分を犯行に走らせる目的で、飲酒した時点で犯罪を誘発させる行為をして実行させていることから、実行行為と責任能力が同時に成り立つというもの。

 

原因において自由な行為の構成については他にも説があるので興味がある人は調べてみると面白いかもしれない。多分役に立たない。

 

ちなみに、この刑法39条を扱った邦画もあったけど、けっこう面白かったので、機会があったらみんなも観てほしい。

 

39-刑法第三十九条- [DVD]

39-刑法第三十九条- [DVD]

 

 まあ原因において自由な行為とは、まったく関係のない話なんですけどね。ちなみに。

凶器トリビア ダンプカーは凶器にはあたらない

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 判示事項  刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたらないとされた事例

 

裁判要旨  他人を殺傷する用具として利用する意図のもとに準備されたダンプカーであっても、他人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らし、ただちに他人をして危険感をいだかせるに足りない場合には、刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたらない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/978/050978_hanrei.pdf

 

現在は、新設された危険運転致死傷罪でズレているので、正確には現行法における二〇八条の三の事を指しているが、引用する際に改変までしたくなかったので原文のまま引用させてもらった。

 

要旨の通り、ダンプカーはただちに危機感を抱かせるような外観をしていないので、準備して集合したところで凶器準備集合に問われるための「兇器」にはあたらないとしたもの。

 

それが認められたらデコトラの集会は凶器準備集合ですな。


ただ、他人を殺傷する用具として利用される外観をもったダンプカーだったら駄目だという見方もできる。

 

いったいどんなダンプカーなのか見てみたい。「人を殺す為だけに作られたダンプカー」、みたいな外観とやらを。

 

事件では他にも、日本刀や拳銃などを準備して集合していたものであるため、そもそもダンプカーが兇器であるとしても無かったとしても、判決に何ら影響は無かったという話。

 

凶器トリビア 1メートルの角棒は凶器にあたる

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長さ一メートル前後の角棒は、刑法二〇八条の二にいう「兇器」にあたる。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/943/050943_hanrei.pdf

 

こちらは先ほどとは違うもの。判決理由において本来殺傷するために作られたものでは無いが、用法によっては害を与えられるものであり、2人以上のものが害を与える目的をもって集合した場合、危機感を抱かせるに足りるとしている。

 

ダンプカーの話はどこ行った!?

逢いたくて震える

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裁判官が、私的な交際を求める意図で、自己の担当する窃盗被告事件の女性被告人を、夜間、電話で、被害弁償のことで会いたいなどと言つて喫茶店に呼び出し、同店内に同席させた本件行為(判文参照)は、裁判官としての職権を濫用し義務なきことを行わせた行為に当たる。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/854/051854_hanrei.pdf

 

「裁判所のBですが」
「弁償の事で、ちょっと会えないかな?」


と言って呼び出したことで職権濫用として問題となった事例。裁判とは関係なく、プライベートな話をしたいと言って呼び出していれば別の問題もあっただろうけど、ここまで問題にはならなかったであろうケース。

 

問題となったのは、窃盗事件の女性被告人(A)を呼び出す際に、裁判所のBである、弁償の件で会いたい等と言ったことにより、職権を行使して出頭を命じられたと信じさせるに足りる行為だと認められた部分。

 

BはAに対し、職権を行使せず食券を行使していれば良かったのかもしれない(激寒)


ここまでくると、ナンパも命がけである。という判例。

 

許可無きキスは強制猥褻

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被告人は被害者とは顔見知りの間柄に過ぎず、夜間自己の運転する自動車に帰宅途上の同女を同乗させ人通りの少ない場所を運転進行中やにわに接吻したいとの欲望にかられ、車内で極力抵抗する同女の右手をつかみ、左肩を押えつけるなどした上、同女の口に接吻したもので、被害者が被告人から接吻されてもよいと認める態度に出たとか、被告人において同女の同意を得られる事情があつたとかいう事実は認められない場合、被告人の接吻行為は強制猥褻行為にあたる。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/099/060099_hanrei.pdf

 

イケメンだったら、多分大丈夫だったはず。
「接吻したいとの欲望にかられ」という文章に、官能的な何かを感じる。

 

嗚呼、接吻がしたい。

 

荷台に人が乗ってる事を知らずに事故を起こしても業務上過失致死

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貨物自動車の運転者が制限最高速度の二倍を超える高速度で走行中、ハンドル操作を誤り自車を信号柱に激突させて後部荷台の同乗者を死亡させた場合には、たとえ運転者において同乗の事実を認識していなかつたとしても、業務上過失致死罪が成立する。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/342/050342_hanrei.pdf

 

けっこう「そもそも論」的な話ではあるのだが、「乗ってたなんて知らなかったんだよ」が通用しなかった判例。

 

無謀な運転をしている時点で、人の死を伴う事故を起こすことは認識し得ていたはずだから、たとえ人が乗っていることを知らなかったとしてもその罪の成立を免れることができないという教訓。

 

強盗が挨拶して家に上げてもらっても、住居侵入罪はちゃんと成立する

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 犯人が「今晩は」とは挨拶したのに對し、家人が「おはいり」と答へたのに應じて住居にはいつた場合でも、犯人が強盜の意圖でその住居にはいつた以上、住居侵入罪が成立する。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/482/056482_hanrei.pdf

 

強盗する意図を隠して挨拶し、家に上げてもらったものの、その承諾は真実について承諾を欠くものとして扱われるとしたもの。家に上げてもらう理由を偽って、承諾を得てから上がり込んでも、その承諾が承諾であると認められないことを明確に示した貴重なお話。

 

素人娘の部屋に、テレビの取材と偽って上がり込み、成人向けの映像作品を撮影する企画視聴したことを思い出した判例。

 

ぼく、あのシリーズ結構好きなんだよね。

 

ザッケンナコラー! 喧嘩用に用意していた刃物を護身用に持ち出したけど捕まった事例

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反目状態にあった男の運転する自動車に意図的に衝突されて自車が転覆したため同人とのけんか抗争等に備える目的で自車のダッシュボード内に入れておいた刃物を護身用にズボンのポケットに移し替えて自車からはい出した後に路上で携帯する行為について違法性が阻却されないとされた事例

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/060/050060_hanrei.pdf

 

要旨だけ見ると、当たり前だろ、DQNやんけ有罪、有罪。と思ってしまいがちなのだが、これがなかなか、見てみると面白い判例。

 

この被告人、車を意図的に衝突させられて車から這い出すときに、相手方の男がゴルフクラブを所持していたのね。だから咄嗟に元々喧嘩する目的で隠し持っていた刃物を持ち出して、その刃物の携帯を訴因とした裁判で正当防衛を主張していたわけ。

 

もともと不法な目的で携帯していた刃物を、護身用に持ち替えたとしても不法な目的で携帯していた刃物としての評価は変わらず、刃物を携帯していたという違法性までは阻却されなかったというお話。

 

A「この刃物でBのやつザッケンナコラーしてやる……」
B「ザッケンナコラー!!」クルマブツケー
A「ぐわぁ! このナイフ持っていくしかねえ」
B「ザッケンナコラー」ゴルフクラブニギリー
A「ザッケンナコラー!!!」刃物カクシー

警察「A、アウトー」デデーン


A「正当防衛ちゃうんかい……」

 

 

実際この男が、刃物を所持せずに、壊れた車の破片などで応戦しようとしたなら評価が変わっていたのかもしれない。応戦するために刃物を使用したことについて正当防衛が認められなかったのではなく、そもそも不法に刃物を携帯していたことが評価されたお話。

 

後書き

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白いなと思える判例はあったでしょうか? 要約であったり感想に関しては色々と怒られそうな記事でもありますが、こんな事件があって、こんな裁判が開かれた、そしてこんな結果が残ったという事実があるということと、何処かの誰かのちょっとした話のネタにでもなればいいかなと思い、記事にしてみました。

 

裁判という事もあり内容はいたって真面目で、当事者は真剣に争ってきたものでしょうけど、その論争は記録されて公開され、いつかどこかの誰かの為になります。この記事で挙げたものも、いつか当事者にならないために気を付けておいたほうが良い事なんかが含まれているのかもしれません。

 

そんなネットサーファーの戯言だったとさ。めでたしめでたし


ではでは

 

 ▼ちゃんとした解説を読みたい人向けの本

刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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▼ちょっとした裁判ネタな記事

hikishiendonho.hatenablog.com

 

 ▼当ブログで恐らく唯一役に立つ記事

hikishiendonho.hatenablog.com