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珍しい食べ物が食べたい

子供のころに不思議な体験をしたので淡々と語っていく

こんにちは

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ホラー映画で肝試しをしているカップルに呪いをかける人、ぼくです

 

過去の記事で不思議な体験をしたと述べましたが、誰か覚えているでしょうか。

 

神も幽霊も信じていないけど、信じていないはずの神様にお祈りを捧げてしまう時もある。 場所は大体便所。 - 引きこもり支援鈍報 in はてな

 

この記事のブコメにて、不思議な体験の話を聞きたいという方が居ましたので、こんな何も得られない話に需要があるのかどうなのか、とは思いつつ書き起こしてみることにしました。

 

怖い話というほど怖くもない話なのですが、考えようによっては怖い話でもあるのでニガテな人はごめんなさい。

 

では、始めていきたいと思います

 

不思議な体験談「窓の外」


今から随分むかしの話になります。ぼくが小学生だったころです。


くの親戚は毎年、お盆と正月に母方の実家へ集まっているのですが、その年は母方の実家が引っ越しをしたため、新築だったんですね。ピカピカの住居に新しい畳のニオイ。当時は周囲にまだ家があまり建てられていなかったのを記憶しています。

 

4月に家が完成して、お盆になって母方の実家へいったときの事でした。ぼくは産まれつきそんなに寝つきの良い方ではなく、ほんの少しの物音がしただけですぐに目が覚めてしまうような人間でした。寝室が変われば3日くらいは、まともに長い時間眠ることが出来ません。なので母方の実家へ行くお盆や正月は大体、寝不足の3~4日間を過ごすことになるのです。

 

母方の実家でぼくが寝るために用意された部屋は仏間でした。大きな窓からは小さめな家庭菜園向けの畑を挟んでせまい道路と1本の街灯がついた電信柱が見えます。普段おきているときは仏間に用が無いので、あまり寄ることは無かったからその風景は、眠る時間になってからしか眺めたことがありませんでした。

 

初日はやはりロクに寝付けず、ずっと窓から見えるつまらない風景を眺めていました。当時の僕には良く分からなかったけど何かが植えられている畑、自動車がすれ違うことのできない狭い道路、そして街灯の光る電信柱。なんの変化もない風景を、ぼーっと眺めているだけで時間を潰すのは退屈で仕方がありません。

 

「はやく朝になればいいのに」

 

団に体を沈め、目を閉じていても時計の秒針を刻む音が気になり、目が開いてしまう。時間つぶしの為に漫画でも家から持ってくれば良かったと当時は考えていた事でしょう。あまり読書習慣のない子供時代でしたが。
携帯ゲームもその時は持っていなかったけれど、据え置きのゲーム機はありました。しかしテレビは仏間に設置されていなかったためリビングにゲーム機を設置していたので、そちらで寝ている他の親戚を起こすわけにもいかないので、夜にゲーム機で遊ぶことはできませんでした。暇を潰せるものが何もなかったのです。

 

だからそんな退屈な風景をながめるだけでも、目を閉じたまま秒針を刻む音を聞き続けるより幾らかマシでした。そうやって乗り越えた初日の夜。しかしまだまだ2泊ほどする予定だと知っていたがために、ぼくはとても憂鬱でした。

 

寝不足の体で海へ行き、同年代の親戚と漫画やアニメの話をしたり、祖母の料理をみんなで食べて、祖父とコマの動かし方しか知らない将棋を打ったりしているうちにまた、寝る時間がやってきました。楽しい時間は過ぎるのがとても早く感じるのに、寝るために用意されたその数時間だけは、何カ月、何年かと思うほど長く感じられました。

 

前日のようにまた、ぼーっと窓から見える代り映えの無い景色を眺めて時間を潰そう。――月の位置が少し変わったな、今日は晴れているから雲が動いているのが良く分かる―― つまらない景色を眺めながら、その少ない変化の中でも変わっていくものを見つめて時間を潰していると、ふとあることに気が付きました。

 

「あれ? 電柱のしたに誰かいる」

 

変化の乏しい風景を眺めていたはずなのに、電信柱の下に居る"誰か"がそこに辿り着くまでの過程を見逃していたことに疑問をもっていましたが、そのときのぼくにとっては丁度いい暇つぶしの材料が現れたという気持ちの方が大きかったと思います。電線の位置関係などから移動している事だけがわかるような月や、窓の端から端へとゆっくりゆっくり流れていく雲を見つめているよりも、真夜中に電柱の下で立っている人間が何をしているのかという事の方がよっぽど興味深いわけで。

 

信柱の下に立っている"誰か"は幼いぼくから見ても判る、女の人でした。長い髪に白いワンピースのような服装。足元まではじっくり見ても確認できなかった為、どのような靴を履いていたのかまでは分かりませんでした。そして何より女性ではないかと思った理由はベビーカーが女性の目の前に置いてあったからです。

 

今になって思いだすと、それだけでなかなか怖いものでした。実はその時午前0時を回っていたので、真夜中に赤ちゃんを寝かせず散歩に連れ出す親が当時は非常識だったという事を踏まえてみるとなかなか奇妙な光景であったともいえます。まあ、100人の人がいれば100通りの生活があるわけで、その時間しか外に出られない事情のある家庭もあるでしょう。だから、あり得ない話ではないのですけどね。ただ散歩をするに適した時間ではないことは確かです。

 

当時のぼくは、そんな考察もせずにその女性を眺めていました。ベビーカーの中の赤ちゃんはどれくらいの大きさなのだろうか。近所に住んでいる人なのだろうか。何歳くらいの人なんだろうか。どんな顔をしているんだろうか。

 

ずっと横を向いていて、顔が見えなかったその女性を眺めていると、今まで見ていた月や雲の変化がいかに退屈であったかが分かります。動くと判っているものの規則的な変化を眺めることは、ずっと同じリズムで刻まれる秒針を聞き続けることと何ら変わりがなかったことも。

 

どれだけ時間が経ったのだろうか。そんなことはぼくには関係ありませんでした。――いつ動くんだろう? どっちに行くんだろう? 右かな、左かな―― 面白いもので動くものを見つめているよりも動かない、いつ動き出すかも判らない、そんなものを眺めている方がぼくにとってはよっぽど楽しかったのでしょう。

 

その思いが通じたのか、やっとのことでそれは起こりました。動いたのです。電信柱の女はゆらっと体を揺らしました。

 

「!!」


ぼくの方向に顔を向けた女と目が合いました。

驚いてしまったぼくは咄嗟に視線を変え、空に浮かぶ月を見ました。――でも気になる―― やはり好奇心には勝てず、視線を電信柱の下に戻すと、そこには既に女の姿はありませんでした。ぽつん、と置かれたベビーカーがそこにはあっただけでした。

 

女は別に、消えたわけでも何でもありません。
近づいていたのです。狭い道路を渡り、畑の中をゆっくり、ゆっくりと歩いて……

 

――なんで? 目が合ったから? ふつうに考えてこれ、絶対ぼくのところに来てるんだよね?――

 

かった。夏休み特有のホラー番組で、目があったら憑りつかれるだの殺されるだの、そういった先入観から自分の身に何かが起こるのではないのだろうかという恐怖で体を動かすことが出来ませんでした。それでも女はゆっくり、ゆっくりと歩いてきています。その女の足を見て、やっとこの女が異常な人なのかもしれないと認識できました。

 

靴を履いていなかったのです。

 

真夜中にベビーカーを押して、靴も履かずに外へ出てこの女は何をしたかったのでしょうか。ただ当時のぼくはそんなことをゆっくりと考えている余裕なんてありませんでした。ぼくに出来ることは目を閉じて何もない事を祈る、ただそれだけでした。

 

すこしずつ体の緊張がほぐれ、動かせるようになったので布団に潜り込んで目を閉じ、ひたすら恐怖に耐えようとしました。今になって考えると、異常者が近づいているのにも関わらず逃げもしないし助けも求めないという判断は、いかにも子供らしく適当なものだったと思います。

 

女はどこまで近づいているんだろうか、女はもしかして部屋に入ってくるのだろうか、窓の鍵は? ちゃんと閉めたのだろうか……

 

布団にくるまっているだけでは何の情報も得られません。布団から顔を出すのは怖いけれど、その女がどれだけ近づいてきているのか、窓が施錠されているか、確認しなければと思い、気合を入れて布団からそっと、顔を出しました。

 


――窓の外には誰も居ない、でも――


何かの気配を感じ取り、首を少し左に向けた瞬間のことでした。
居たのです。名前も顔も知らない女がいたのです。長い髪の白い服を着た女が……

 

こまではハッキリと覚えているのですが、気が付いた時には朝になっていました。僕が覚えていたのは目の前に女が居たことだけ。

 

夢でも見ていたのだろうと、自分に言い聞かせたかったのですが、部屋の様子がぼくにそうさせませんでした。あたらしい畳の香りがする部屋の中には土、土、土…… いくつもの足跡が残されていて、この部屋に何かが入って来ていたことを示唆していました。

 

当然、その足跡を見た祖父や祖母は驚いて、警察に連絡したのですが、その後の情報は詳しくは聞くことが出来ませんでした。ただそのあと警察に呼ばれて面通し(目撃者に犯人の疑いがあるものの顔写真などを見せて確認をすること)させられるような事が無かったという事は、その女に関する情報が捜査では何も得られなかったという事なのでしょう。

 

その体験以来、ぼくは幽霊という存在にすこし興味を持ち、幽霊が居るという事は死後もなんらかの形で自分という存在が残るのではないのだろうかと考えるようになったのですが、今はまた、考え方も変わってしまいました。

 

あのときのぼくが睡眠不足で突入した2日目の夜だったこと、幼かったこと、ホラー番組などで恐怖体験を視覚的に知っていたことを考えると、いつしか自分が眠ってしまっていた事にも気付かずに夢を見て、自ら窓を開け外へ出て、また帰ってきて布団に潜り込んだのではないかというのが一番納得できる推測です。

 

ただその日、ぼくの足の裏に土がついていなかったという事を除けば……

 

 

 

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以上がぼくの経験した不思議な話です。ちなみに次の日は祖父が仏間で寝ることになり、代わりにぼくは祖父と祖母の寝室で、祖母といっしょに寝ることになりました。


数年経ってもその思い出がどうしてもひっかかり、バイクや車で幽霊を探しに1人で肝試しをよくしていたのですが、いまだに幽霊と遭遇したことが無いです。遭遇したことが無いから未だに幽霊を見たという話なんかを疑ってかかるのですが、幽霊という存在が確認できる日が来ると面白いだろうなと思っているぼくのながい昔話でした。

 

ではでは

 

百万人の恐い話 呪霊物件 (竹書房文庫)

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▼どちらかというと創作なら人間が怖い系のほうが好きなぼくのはなし

 

hikishiendonho.hatenablog.com