【ネタバレ注意・感想】浦島太郎とかいう昔話を読んだので堂々とネタバレしていく
こんにちは
部屋の片隅でふとんにくるまる亀のような人、ぼくです。
突然ですが、みなさまは浦島太郎という話をご存知でしょうか。ぼくは結構うろ覚えで、とりあえずカメ助けて竜宮城まで連れて行ってもらって、とりあえずタイやヒラメの舞い踊りとやらを眺めて乙姫様に玉手箱貰って、帰ってから玉手箱開けてヨボヨボになる的な、雰囲気でしか覚えていないです。
以前、桃太郎を読みながら適当に書きなぐった記事が有難いことに少し好評だったようで、また同じことをしようかと思っていたのですが、どうもワンパターンなシリーズを続けることに興味が無いとぼくの中の拙者が申していたので、あの記事のスタイルではたぶん続けないです。
本記事では、前回のような昔話を面白おかしく書き換えて読み解くものではなく、あくまで原文を読んだぼくの感想を淡々と書き綴っていく読書感想文にしようかとおもっています。
(追記:下記リンクは浦島太郎という物語の原作ではなく、本記事ではあくまでぼくが下記リンクの浦島太郎を読んで思ったことを書いた感想となります)
今回お話する浦島太郎の物語については上記リンクを参考にしていただきたい。
前回記事の桃太郎についてもそうであったように、リサーチ能力のないぼくが参考にしているのはいつも青空文庫ですからな。
じっくりと読んでみると、今まで自分がふわっと覚えていたような浦島太郎という物語との違いに、ちょっとした「へぇ~」を味わうことができる。知っているつもりだった昔話を読むのはいいもんだ。
第1章 亀は金で助けた
かめの子を、あおむけにひっくりかえして、足でけったり、砂のなかにうずめたりしました。浦島はますますかわいそうにおもって、
「じゃあ、おじさんがおあしをあげるから、そのかめの子を売っておくれ」
といいますと、こどもたちは、
「うんうん、おあしをくれるならやってもいい」
といって、手を出しました。そこで浦島はおあしをやってかめの子をもらいうけました。楠山正雄 浦島太郎より引用
正直、これを読んだときには衝撃を受けた。もともとそういう話だったのかもしれないのだが、ぼくの中で勝手に出来上がっていた浦島太郎という人物は、少年であり、正義感が強く、子供たちがいじめているカメを見つけていてもたってもいられずに少年漫画の主人公よろしく「亀に何するだァーー」とラリアットでもかまして撃退しているものだと思っていたからだ。
この文の続きには「おじさん、ありがとうまた買ってくれよ」とクソガキが浦島に対して言うことからも、浦島太郎はすでにオッサンだということが分かる。ぼくが彼を少年だと思い込んでいたのは、たぶん若齢化していく少年漫画の主人公たちに影響されていた部分があるのかもしれない。
ちなみに、おあしというのは今でいう「お小遣い」のことであり、このクソガキどもはカメを虐める姿を見せつけて浦島に亀を買ってもらうというボロい商売をしていたことになる。浦島は子供ではなく大人なので金で解決した。
いつのまにか、一ぴきのかめが、舟のそばにきていました。
浦島がふしぎそうな顔をしていると、
「わたくしは、先日助けていただいたかめでございます。きょうはちょっとそのお礼にまいりました」
かめがこういったので、浦島はびっくりしました。楠山正雄 浦島太郎より引用
衝撃的な違いでもないのだが、自分が勝手に思い描いていた浦島太郎の物語とは違っていた点なのでこれも紹介しておく。と、言ってもぼくが勝手に亀がその場で喋り出すものと勘違いしていただけって話なんだけど。
ちなみに亀を助けてから2、3日ほどあとの話である。おそらくこの間に乙姫へ報告したら「そのおっさん連れて来い」、とでも言われたのだろう。このあと浦島はカメの誘いに乗って竜宮へ向かうわけだが、物語冒頭で
浦島太郎は、毎日つりざおをかついでは海へ出かけて、たいや、かつおなどのおさかなをつって、おとうさんおかあさんをやしなっていました。
楠山正雄 浦島太郎より引用
とあるように、浦島は父と母を養うために漁業を個人で営んでいたわけで、それをほったらかして竜宮城に向かうお話だから後味が悪い。何せぼくが勝手に想像していたの浦島という男は少年だったから、誘われたら行った程度の認識でなんの問題もなかったわけだ。でも、物語冒頭に書かれているこの背景を読んだときには寒気がした。
父母を養う独身サラリーマンが、歌舞伎町的なところをほっつき歩いていたときに、怖い団体のお兄さんたちに絡まれていたキャッチのにーちゃんを金で助け出したら数日後、そのキャッチに見つかって誘われるがままにキャバクラへ出かけたようなものだと、ふいに思ってしまったからだ。
第2章 基本無料の竜宮城
たいや、ひらめやかれいや、いろいろのおさかなが、ものめずらしそうな目で見ているなかをとおって、はいって行きますと、乙姫さまがおおぜいの腰元をつれて、お迎えに出てきました。やがて乙姫さまについて、浦島はずんずん奥へとおって行きました。めのうの天井にさんごの柱、廊下にはるりがしきつめてありました。
楠山正雄 浦島太郎より引用
この章については、浦島太郎という物語での竜宮城が、いったいどんな場所なのかを説明するだけのものなので特別、意外だと思った箇所は無い。ただ、第一章での印象がどうも強く、これがキャッチのにーちゃんを助けた結果、タダで遊ばせてもらえるキャバクラって次元を遥かに超えているなと思ってしまった。
いや、もしかしたら金持ちの道楽とはこういうことを指すのかもしれない。原文のこの章を読む限り竜宮城という場所はとてつもなく豪華な城であり、とても一般人には立ち入りなど許されないような場所ではない。貸し切りのディズニーランドみたいなもんだ。
ごちそうがすむと、浦島はまた乙姫さまの案内で、御殿のなかをのこらず見せてもらいました。どのおへやも、どのおへやも、めずらしい宝石でかざり立ててありますからそのうつくしさは、とても口やことばではいえないくらいでした。
楠山正雄 浦島太郎より引用
乙姫とやらの趣味の悪さが滲み出ている場所だ。いち漁師である浦島氏に対して、彼女は自宅自慢をここから先ダラダラと続けていくわけだ。これに対して浦島太郎という男は僻みもせず妬みもせず、竜宮城という基本無料のキャバクラ城を満喫していくわけなのだが、彼に恐怖という感情は無いのだろうか。
得体のしれない金持ちの家に招待されてご馳走を頂き、宝石まみれの城内を案内する。家臣を助けたものに対するお礼をしているというよりかは、どう見ても自分の権威を見せつけているような対応である。裏のあるタイプの恩返しだ。
浦島氏はこの時点で気付かなければならなかったのかもしれない。ここが竜宮城とか言うキャバクラなんかではなく、竜宮城という怖い人たちの本拠地だったということに。
浦島は何を見ても、おどろきあきれて、目ばかり見はっていました。そのうちだんだんぼうっとしてきて、お酒に酔った人のようになって、何もかもわすれてしまいました。
楠山正雄 浦島太郎より引用
完全に洗脳である。
第3章 解ける洗脳、脱出
毎日おもしろい、めずらしいことが、それからそれとつづいて、あまりりゅう宮がたのしいので、なんということもおもわずに、うかうかあそんでくらすうち、三年の月日がたちました。
楠山正雄 浦島太郎より引用
恐ろしい話である。怖い人たちの事務所で3年間も遊び続けていたわけで、ここにきてやっと浦島という男は父母のことを思い出すのだが、彼の両親に対する思いがそれだけ弱かったのか、竜宮という城がそれだけ楽しかったのかは定かでない。
前章でも触れた通り、裏のあるタイプの恩返しを食らった浦島が、その時点で両親の事を思い出していれば3年間も養う必要のある家族のことを忘れて遊びほうけている事は無かったのだろうが、どうみても時すでに遅し。病気やけがをしていなくても、家計を支える大黒柱が3年間もどこかへ行ってしまえば両親も働かざるを得なくなるだろう。そうでなければ死ぬからだ。
「いいえ、そうではありません。じつはうちへ帰りたくなったものですから」
といいますと、乙姫さまはきゅうに、たいそうがっかりした様子をなさいました。
「まあ、それはざんねんでございますこと。でもあなたのお顔をはいけんいたしますと、この上おひきとめ申しても、むだのようにおもわれます。ではいたし方かたございません、行っていらっしゃいまし」楠山正雄 浦島太郎より引用
あっさり返してくれる乙姫も意外だが、ここまで遊ばせてもらってから「帰るわ」とこれまたあっさり告げる浦島の図太い神経もなかなかのもの。ブラック企業の研修が終わった後に「この会社、合わないんでやめます」、と言い出す事も出来ないままダラダラと働いてしまっている人たちも多いこの社会で浦島という男は、こうもあっさり帰ると言ったわけだ。
別に彼はブラックな職場から抜け出すために、言ったわけではないのだが。世話になっている(と思っている)ところを抜けるっていうのは結構難しく感じる。どんな人でも集団に混ざればその中で誰かに必要とされているところがある訳で、竜宮城でNEETを嗜んでいた浦島氏も、乙姫がその離脱を残念がるところからみて、必要とされているところがあったのだろう。それを感じてしまうと尚更、なかなか人は集団から抜け出せなくなるもんだ。
壺を売りつけて紹介者に上納金を振り分けるシステムのような、いつ辞めた所で誰も損をしないような集団でも、セミナーやら飲み会の形をした勧誘会で出会った紹介者に対して「ぼく、この商売やめます」と言いだせないのはそういう気持ちが働いているからなんだろうな、と思う。期待という名の牢獄だ。
PS2版でのリメイクで、フローラにするかビアンカにするか、余計に悩むようになってしまったのも期待という名の牢獄がプレイヤーを苦しめるようになったからだろう。悩んだ挙句話しかけたのがルドマンだったということは言うまでもない。
第4章 玉手箱開けた結果wwwww
「ああ、そうそう、浦島太郎さんというと、あれはもう三百年も前の人ですよ。なんでも、わたしが子どものじぶんきいた話に、むかし、むかし、この水の江の浜に、浦島太郎という人があって、ある日、舟にのってつりに出たまま、帰ってこなくなりました。たぶんりゅう宮へでも行ったのだろうということです。なにしろ大昔の話だからね」
楠山正雄 浦島太郎より引用
これは自分の家が見つからなくて、困り果てた浦島太郎がそこらへんでとっ捕まえた婆さんから聞き出した情報だ。恐ろしい事にたった3年しか居なかったつもりが300年も居なかったことになっているというファンタジー。
それにしても300年も昔に行方不明になったオッサンが、その名前とともに語り継がれているのも面白い話である。第1章でも、亀に対して浦島太郎が言っていたように、竜宮という場所の存在は地元では一応知られているのだが、300年経ってもとりあえずその場所も語り継がれている。よっぽど退屈で目新しい情報の流れないド田舎なのだろう。
自分が居ない間に外では300年も経っていたことを知った浦島太郎は「玉手箱開けたら何か分かるやろ」、と触るな危険を触る子供のように、そのフタを開けてしまうわけだ。そしたらヨボヨボのシワシワになって、オッサンからお爺さんにジョブチェンジしてしまった。
「なるほど、乙姫さまが、人間のいちばんだいじなたからを入れておくとおっしゃったあれは、人間の寿命だったのだな」
と、ざんねんそうにつぶやきました。楠山正雄 浦島太郎より引用
無駄に賢者モードである。
落ち着いている場合じゃないだろう、と言いたいところだが慌てようが喚こうが何も出来ないというのも事実。
それにしてもこの玉手箱。何故乙姫は浦島太郎にこんなものを渡したのか、そして開けたら何が起こるかを説明しないまま別れたのか、まったくもって不明である。第3章にて竜宮に帰ってきたければ玉手箱を開けるなと注意されていたのにも関わらず、何かわかるかもしれないと、その場のノリで開けた浦島太郎もなかなかのアホだが、消費者というのは説明書や規約をロクに読まないものだ。彼の事もなかなか悪く言う事などできない。
ただ、もうすこし親切な設計にしてほしかったと思う。たとえばフタに「※このフタを開封した場合、メーカーの保証が受けられなくなります」とか注意書きがしてあったら浦島太郎は思いとどまっていたのかもしれない。
さいごに
こうやって、自分が知っていたつもりの昔話を読んでいると結構新鮮なもので面白いもんですね。作者がどういうつもりで書いたかは別として、読んでいる今の自分や現代に当てはめて考えていくと、教訓になるな。って思う所もいろいろとある訳で。
タイトルだけは知っているけど読んだことのない昔話って結構あるので、いろいろと読み漁ってみようかなと思いましたとさ。めでたしめでたし
ではでは
▼桃太郎の話を面白おかしく取り扱った記事
▼これもある意味読書感想文