引きこもり支援鈍報 in はてな

珍しい食べ物が食べたい

アルバイトの自爆営業は恵方巻に限った話じゃないからな、うなぎやクリスマスケーキもアルバイトの屍の上に成り立っていることを覚えておこう

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近よく、コンビニのアルバイトが恵方巻を店から無理矢理買わされる等、アルバイト店員にノルマを課す加盟店の運営が問題視されている。こういった従業員が自社商品の購入を強要させられる状況について「自爆営業」と呼ばれるほど便利な言葉ができるくらい、問題になっている事なのだ。

 

wikipediaによると、コンビニでの問題は2017年になり話題になったとか書かれているが、話題になったのはそのころだとしても、ぼくが引きこもる前から既にこの問題はあった。少なくとも10年くらい前から知っていた話だ。多分、コンビニやらスーパーやらでアルバイトをしていた経験のあるものは、ニュースに対してこういった感想を持っている人たちもそう、少なくないだろう。

適法ではない経営手段

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過去に小売店でアルバイトをしていた経験はあるが、幸いその店は自爆営業をさせるような店舗ではなかった。しかし、別店舗では酷いノルマを課すところがあり、その店舗で働いていた人間が、辞めてぼくのバイト先に来た時、未達成の場合は強制購入だったこと、遅刻やミスに対する罰金制度もあったこと、レジの金が合わなかったら検算担当者(当然アルバイト)が、差額を店に入れなければならないルールがあったことなど、愚痴をこぼし「そう考えたらこの店は天国だよ」と言って1日15時間くらい働いていた。

 

そんな店もあるんだなあ、と思いながら検索してみると結構でてくるもので、特に遅刻罰金制度(主に何分〇円といった賠償予定)、給料からの天引きシステムがある事なんかを知った時は驚いた。

 

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「え、これまずくないっすか?」

 

率直な感想はこれだった。

 

(賠償予定の禁止)
第十六条  使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

(制裁規定の制限)
第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html より抜粋

 

 

人を雇ううえで意識している必要のある、労基法でさえこれだけ抵触してしまう内容なのだ。
罰則については

 

16条→ 6か月以下の懲役、30万円以下の罰金
91条→ 30万円以下の罰金

 

と言ったもので、どうやら何年も臭い飯を食わされずに済む内容らしい。もしかしたら経営者はその違法性を指摘されたところで、痛くもかゆくもないと言わんばかりに平然とやってのけているのだろうか。

 

たしかに、アルバイトにしょっちゅう遅刻されてしまう事には、対策が必要なのかもしれない。その一環として、違法ではあるがやむを得ずこうするしかなかった事情が店にもあるのかもしれない、実際、理由もなく遅刻するといった勤務態度自体、そもそも褒められたものでは無い。交代制であれば、交代する相手はどんな事情があろうが店に残らなければならないわけだし、実際に迷惑をかけることになる。

自爆営業の違法性

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ただ、自爆営業となると話は変わってくる。

 

やりかたにもよるが、その内容によっては刑事事件にも発展しかねない経営手段だ。特に、何も教えられぬまま「経営者」という肩書にあぐらをかいているような人間であれば「あ、こうすれば売り上げ上がるやんw」、といってまずは従業員にノルマを課す、そしてノルマ未達成があまりにも多い状況を見て「うーん、罰金性にすればみんな死に物狂いで売ってくれるやろw」、とノルマ未達成者に罰金を設定する。

 

この時点で、罰金が天引き制であれば問題にもなるだろう。しかしまだまだ売り上げが伸びない、廃棄は出てくる。SV*1はどんどん発注しろと言ってくる。「そうだ、無理矢理買い取らせよう。買わない奴からは分割で罰金にするってことを告知すればいい」。こうなったら強要罪もあり得る話だ。労基法に違反するよりももっと重たい罰が待っている。

 

余計な事をすれば更に罪は重くなる。

 

(強要)
第二百二十三条  生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3  前二項の罪の未遂は、罰する。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html より抜粋

 

 

こうなってくれば、相談先は警察になってくる。心当たりのあるバイト君は、辞めたくなったらピーポー君を店長やオーナーにぶつけような。


当然、こういった問題はコンビニ業界に限ったことでは無いだろう。もともと自爆営業という言葉は、別の業界で使われていた言葉から来ている。

 

コンビニのオーナー店長をされている、三宮貞雄さんの著作「コンビニ店長の残酷日記」にはこう記されている

 

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

 

 

コンビニオーナーと本部の契約は有期契約で、だいたい10~15年だ。その後、更新されるかどうかは、本部の胸先三寸となる。
「コンビニ店長の残酷日記」 p32より抜粋

 

まず、加盟店は独立経営者という建前から、ノルマは「推奨商品の発注の指導」という形をとることだ。ただ、前述したように本部の力は非常に強いため
「去年は100本でしたから、今年は120本いってみましょうよ」
 と言ったSVの指導を断る度胸のある店主は少ない。

「コンビニ店長の残酷日記」 p37,38より抜粋

 

 

このように、お店の経営者も本部との契約更新を控えている為、SVの提案に文句を言いづらい環境で、無茶な提案をされ、知恵も無ければ違法な手段に手を染めるか、本人が自爆する以外に方法はない。著者は店で売っている商品をバイトに勧めることはあることだが、嫌がるアルバイトに無理矢理買わせることはダメだろう、としている。

 

自爆営業をやっている店舗の経営者に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだ。

 

自爆営業が出来上がる環境は、まず断れない提案をオーナーが受け、その内容で売り切ることが出来ない経営者が、手段を探る、結局行きつく先は違法な自爆しかない、といった仕組み。当然、これ以外にも原因はあるのだろうが、ざっとこんなもんなのだろう。

 

ぼくの知るコンビニの経営者には、とりあえず資産運用の方法の1つとして勧誘されたケースであったり、一発逆転を狙い、借金をしてまで、コンビニという形態を選んだケースの人パターンの人間くらいだ。少なくともぼくが知っているコンビニの経営者は「とりあえず何かしよう」、と始めたのがコンビニであったわけで、別に経営の知識や商売の知識があったわけじゃない人が多い。

 

ちなみに法律に明るい人間など、今まで知り合って来た経営者たちの中には居なかった。

 

そんな人たちに、数日セミナーやら合宿やらで叩きこんだ知識とやらをフルに活用して、推奨商品はこれだけ発注しろ、廃棄になっても知らん、勝手にしろ、断ったら次の契約どうなるかなー? なんて圧力をかけられたら、そりゃ、とりあえずなんとか赤字を回避するためにアレコレ始めるわけだ。

 

だから、こうなる。日本郵便の自爆営業がニュースで話題になり、問題になったことなど忘れてしまったかのように従業員に自爆営業をさせてしまうわけだ。

この先生きのこるには

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アルバイトからしてみれば経営者側の事情など知ったことではない、労働基準法をきちんと守れとなるだろう。当然のことだ。実際、そうやって法令遵守しながら、まっとうな経営を続けられている店舗だってある。

 

ところで、この本部と加盟店の関係から自爆営業が成り立つというわけだが、本部は自爆営業をさせる加盟店に対してどのような意識を持っているのだろうか。

 

ぼくは、仮に本部がそれを問題視して「自爆営業なんてさせるなよ、絶対だぞ」、と加盟店に注意を促したところで、絶望的な提案をやめない限り、バレなきゃ何やっても大丈夫、なんてTwitterやらFacebookやらブログやらがある、こんな時代に、アルバイトに対してとんでもないルールを設ける経営者は後を絶たないだろうと考えている。

 

彼らも、身銭を切ってまで経営なんてしたくないのだ。当たり前のことだけど。

 

昔、友人がマルチ商法に目覚めたことがある。彼は自分の勧誘方法が適法な手段ではないことなど知らされず、セミナーとやらで教えられたままにビジネスの説明を続けていた。可哀想に思ったぼくは、彼がこれ以上友人を失わない様にと、慣れない法律関係の情報を読み漁り、彼の勧誘方法についての問題点を指摘して、数日かけて説得したことがある。

 

彼がその商売をやめた理由は、今まで誰も教えてくれなかった合法的な手段で利益を出すのが、とても想像つかなくなったからだ。いまでもその友人とは交流がある。ちなみに彼は、すでにたくさんの友人を失っている。

 

どんな田舎でも、市街地へ出ればコンビニはいくらでもある。全国に何万店舗もある。その店舗の数だけ経営者と従業員がいる。その人たちは、自分のやっていることが適法な手段であるかどうか、きちんと本部に教えられてきたのだろうか? ぼくがコンビニ経営者になったことが無い以上、それは経験者にしか分からないことだが、セミナーやら合宿やらの内容に、それらの知識を付けさせることが含まれているとしても、ぼくが今まで肌で感じてきたことから言わせてもらえば恐らく足りてない。

さいごに

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営者に、機械の操作や発注量の計算方法などしか教えられていないまま、世に放り出してあとは勝手に強くなれよと言っているとしたのなら、それほど無責任なことはないだろう。

 

マルチ商法にハマった友人のように、加盟したらあとは好きにしろスタイルで放りっぱなしにされて、手段を模索していくうちに違法な手段に辿り着き、多くの人たちがそれが普通なのだと誤解していくうちに、結局それが社会問題になっていくのと同じ構図に見える。

 

立経営者と名乗らせておきながらも、まるで使用者と被用者のような関係で看板を提供する本部は、この問題に対してどのような取り組みを見せていくのかが、今後の見どころではある。

 

ちなみにぼくは、コンビニ経営者さんたちの愚痴や悩みを聞くうちに、絶対に手を出さないって心に決めた。そもそも接客苦手なので。

 

▼参考書籍

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

 

この本では、日記風にコンビニ経営の辛い所や、逆にちょっといい話なんかも書き綴っている。後書き含めても200ページに満たないので、手軽に読める点もオススメ。コンビニ経営に興味のない人でも、大変なんだなあって気持ちで読める内容。コンビニに興味はあるけど、勧誘を受けていて都合のいい話しか聞かされていない人は、絶対に読んでおいたほうが良いと思う1冊。

 

▼恵方巻のコスプレに目覚めたらコレ

のり巻きマスク

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 ▼過去記事

 

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*1:ザックリ言うと、コンビニの本部の人間