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珍しい食べ物が食べたい

日本語の誤用って、市中引き回しの上打ち首獄門にするほどの事なのだろうか

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ログやTwitterもそうだが、何らかの手段を使って情報を発信していく人間は、少なからず言葉遣いに気を付けているだろう。ぼくも至らぬところはとても多いが、外部に情報発信する際は自分の発信する言葉に対して少し気を遣っている。

 

さて、どんなに気を付けていても、言葉の本来の意味とやらを間違って覚えたまま使ってしまう事もあるわけだが、インターネットで情報を発信すると色々な人が、その情報を閲覧していて、その中には日本語に詳しい人たちも沢山居る。

 

ういった人たちに、うっかり誤用してしまった日本語を使った文章を読まれると、指摘されることもある。最悪の場合、それがどんどん拡散されていって、公開処刑されてしまうことだってあり得る。

 

ぼく自身は、誤用に対してそこまで厳しくないほうだと思っている。なんとなくではあるが、使われた言葉が本来、正反対の意味を持つ言葉であったとしても発言者の意図さえ判れば、別に問題は無いと思っているからだ。

 

なお、この記事では本来の意味で使われていない言葉を批判する目的は無い。そもそも何をもって正しい日本語とするかを明確にしていない。あと、専門用語としては明確に区別されている言葉を一般の人が混同している例は、いろいろ考えた結果、蛇足だと思って省いた。

 バイト敬語

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誤用の指摘が目立つジャンルとして、所謂「バイト敬語」と呼ばれる接客用語が挙げられる。ぼくも小売店でのアルバイト研修をしていた時、よく上司に怒られていた。例えば

 

「合計、900円になります」
「1000円からお預かりいたします」
「100円とレシートのお返しです」

 

この接客用語だと、ぼくが勤めていたお店では呼び出し説教レベルだ。
しかし、細かい部分をみて何も疑問に思いさえしなければ、意味も通じるし、実際こんな接客用語を使われたところでぼくは何とも思わない。

 

接客用語や日本語に詳しくないので、本当にそれが正しいのかどうかもぼくには判別できないのだが、先ほどの例だと「900円になります」、税込みと商品合計による金額の変化なので、おそらく「なります」を使っても問題なんて無いのだろうが、シンプルに〇〇円です、〇〇円でございます、の方が印象がいいから、だそうだ。

 

ただ、〇〇円からお預かり~は、どうもその職場的にアウトらしい。よくよく考えると、この例でいけば預かっている金額は1000円であり、何かを略されていたとしても何をどう略してそうなるのか理解できない言い回しだ。

 

よく使われがちなものとして「1000円から頂戴します」という略され方、この場合「1000円から(代金を)頂戴します」と読み取れる。預かるという言葉を使う場合、「〇〇から」を入れるな、と店から注意された。

 

最後の例、これは単純な理由で、レシートは店側が発行したものであり、「返す」ものでは無いからだ。店からは〇円のお返しと、レシートでございますと言えと教えられた。

 

これらのバイト敬語に対して、人は本当に不快感を示すものだろうかと思って調べてみると、バイト敬語と調べた時点で不快なバイト敬語のまとめであったり、何かと悪印象を持っている人のページが見つけられる。言葉の世界は厳しい。

 

これらの言葉遣いに対しては、当時の職場内でもかなり意見は分かれていた。ぼくの教育担当だった上司はその手の言葉遣いにとても厳しく、お客様に対して失礼にあたるから、絶対に使うなという意見だったが、お店を管理する店長やオーナーはそうでもなく、「意味さえ伝わって、誤解されなければそれでいいだろうし、愛想良く接客してくれればいいよ」と言っていた。

 

どちらの意見が正しくて、どちらの意見が間違っているか、なんて言えるものでは無いだろう。たぶん答えの出ない問題だ。特にピーク時なんか、言葉遣いを気にしてモタついてしまっていては、店にも客にも迷惑が掛かる。そもそも自然に正しい言葉遣いが出来るように訓練すべきなのだろうが。

目上の人に使えない言葉

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バイト敬語だけではない。良く見かける言葉の中にも指摘される言葉はいろいろとある。例えば、本来目上の人に使ってはいけない言葉系だ。

 

「ご苦労様でした」
「了解しました」
「なるほど」

 

正直、目下の人に使われたところでイラっとも来ないほど、ぼくにとっては聴き慣れた言葉だ。そもそもこれらの言葉を使われたところで「コイツ、ぼくのこと見下してるのか?」なんて気分になったこともない。これを知ってからはとりあえず使わないようにしようと心がけてはいるが、つい口癖で出てしまうこともある。

 

これらを「転ばぬ先の杖」として教えてくれる人にはなんとも思わないが、たまにマジギレしながら文句をつけてくる人も居る。多分「貴様は言葉遣いについての知識がとても深いのですね」、と言えば「誰が貴様じゃボケ」と返してくるだろう。

 

き‐さま【貴様】 の意味

[代]二人称の人代名詞。
1 男性が、親しい対等の者または目下の者に対して用いる。また、相手をののしる場合にも用いる。おまえ。「貴様とおれ」「貴様の顔なんか二度と見たくない」
2 目上の相手に対して、尊敬の気持ちを含めて用いた語。貴殿。あなたさま。

http://dictionary.goo.ne.jp/jn/51582/meaning/m0u/ より抜粋

 


人に何かを指摘するというのはとても難しい。

誤用警察が御用になるほど日本語は難しい

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ぼくのTwitterやらブログの過去記事を漁っていたら、酷い誤用なんて数秒あれば見つけられてしまうくらい、しょっちゅう何かしらやらかしているだろう。読んでいる人が殆ど居ないから指摘される確率も低いだけだ。この記事を書き上げるために日本語の誤用について調べている最中、「ああ、これ誤用だったんだ」って気付かされることも多かった。

 

時代とともに言葉の使われ方は変わっていくのに、誤用をきっかけに人を叩いてばかりいると逆に、恥をかくこともあるだろう。記事冒頭では誤用に厳しくないと自己紹介したわけだが、10代のころは中二病を拗らせていたせいか、とても厳しかった。

 

ネットで見かけただけの薄っぺらいソースを基礎にして、少しでも言葉遣いに違和感を覚えたら「その言葉、使い方間違えてますよ(メガネクィッ」みたいなことをやっていたことがある。当然、基礎の出来上がっていない人間だから、逆に指摘されることもある。そのときは顔を真っ赤にして逃げ出していた。

 

「一所懸命」「一生懸命」
「的を得る」「的を射る」
「危機一発」「危機一髪」
「火蓋を切って落とす」「火蓋を切る」
「T字路」「丁字路」

 

いずれも議論の対象となりがちな言葉たちだ。「正しい日本語厨」*1だったぼくは、ある日ぽろっと「的を得る」という表現を使用したことがある。その際、知り合いに「まあ、的は得るもんじゃなくて、射るもんだけどなw」と言われて顔を真っ赤にし、必死になってgoogle検索を使い、「的を得る」も別に間違ってはいないというソースを探していた事がある。

 

ミイラ取りがミイラになった、いや誤用警察が御用になったと言うべきか。

 

調べた結果から言えば、この表現を一方的に叩いてつるし上げる人たちも、結構恥ずかしい分類になるそうだが、言われた当時の自分は、心臓を正確に撃ち抜かれた気分だった。ただ「的を射る」を使うほうが無難とされているので、今はとりあえず的を射っている。皆が的を得てきたら、ぼくも的を得ようと思う。

本来の意味とは違う定着をする言葉もある

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誤用の中に元々は別の意味で作られた言葉だったのに、いつの間にか定着した誤用というものもある。そういった表現に対する指摘をしていく事については、同じ日本語を使うもの同士で、意味が分からないあやふやな言葉になってしまうと、その表現を使うことが難しくなっていく事から、指摘する人も増えてしまうのだろうと思う。

 

「おもむろに」
「世間ずれ」
「役不足」
「さわり」
「確信犯」

 

割と誤用警察による摘発対象となりがちな例。役不足や確信犯については、よくネット掲示板で見かけるネタだったので、なんとなく知っていたことだったが、「世間ずれ」はこの記事を書くまで勘違いして覚えていた。

 

せけん‐ずれ【世間擦れ】 の意味

[名](スル)実社会で苦労した結果、世間の裏に通じて悪賢くなること。

http://dictionary.goo.ne.jp/jn/123956/meaning/m0u/ より抜粋

 

 

ぶっちゃけ、つい最近まで世間知らずのお嬢様的な使い方をしていた。「あの政治家は産まれが裕福で世間ずれしている」とか、そんな感じ。

 

たぶん、ぼくのような勘違いをしている人には通じる言葉なのだろうが、この言葉を本来の意味で覚えている人にとっては、その文章が持つ意味が変わってくる。先ほどの例で行けば


「あの政治家は、産まれが裕福で苦労した結果、世間の裏に通じて悪賢くなっている」
といった意味合いになってくるのだろう。

 

しかし、勘違いしたままのぼくはそういう意図で、この「世間ずれ」を使ったわけではない。
「あの政治家は、産まれが裕福だったせいか、世間の常識から外れた事ばかり言っている」
と言いたかったのにもかかわらずだ。

 

受け手の教養によって、捉え方が変わってしまうような表現は本当に不便だと思う。しかもその誤用を、影響力の強い人が使ってしまうと、多くの人たちが間違って覚えてしまう為、指摘する人たちも全力で指摘しにいくのだろう。恐らく正義感のようなもの。

 

ぼくとしては前後の文章で意図が判断できればいいや、と軽く考えているのだが、どうもそれも難しい表現がある。「おもむろに」だ。

 

おもむろ‐に【▽徐に】 の意味

[副]落ち着いて、ゆっくりと行動するさま。「徐に立ち上がる」「徐に口を開く」
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/33536/meaning/m0u/ より抜粋

 

 

この表現を見かける際、「急に」という意味合いで使われているであろう文章を見かけることがある。「爆発音を聞き、おもむろに振り返った」といった場合、本来の意味で覚えている人は「なんで、そんな危ない状況だと思われる中で、ゆっくりと振り返るんだ? アホじゃねーのこいつ」ってなる。しかし、もしかすると筆者は急にという意味合いで使ったわけではなく、キャラクターの個性として、落ち着いた人物であることを表現するために用いているのかもしれない。書いた本人にしかその意図が分からない表現だ。

さいごに

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け手によって意味合いが変わる話で思い出したが、過去に配達のバイトをしていたことがある。そのとき、配達が終わった後に上司と談笑していると、「ああヒキ君、ついでにあのバイクなおしといて」と言われた時に、ぼくは工具箱を取り出し「どこが壊れているんですか?」、と質問をして爆笑*2されたことがある。

 

関西弁に慣れていなかったころ、関西弁を使う人が多い職場で起こった出来事だ。片付けろという意味合いで言われた「なおしといて」を、「修理してくれ」という意味合いで受け取ったがために起こった悲劇。方言ネタの会話になると、この話をしたら結構ウケるからよく使っている。

 

このような体験から考えてみると、本来の意味の違う誤用も、知識レベルの差による、一種の方言のように思えてくる。ある層の人は別の意味で使っていて、ある層の人は本来の意味でしか使わない。

 

葉の変化を止める考え方も、1つの表現に対して皆が共通の認識をもち、便利な仕組みにするために大事だし、言葉の変化を研究して、誤解を生まない表現を考えることや、発言者の意図を汲み取れるようにすることも大事だ。そもそも言葉の変化を完全に止めて固定してしまっていたら、ちょっとしたニュアンスの違いを表現するための言葉なんて生み出されなかっただろうし、言葉遊びも非常につまらないものになっていただろう。

 

人と喋る機会のないニートが、とりあえず誤用で炎上しないように頑張って勉強しようと思っただけの日記。

 

ではでは

 

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新編 日本語誤用・慣用小辞典 (講談社現代新書)

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*1:専門家でもなく、薄い知識で人を叩くようなさまを現す意として使う

*2:その場にいた大勢の同僚や上司も笑っていたので本来の意味での爆笑である